2012年6月12日火曜日

詐欺ではないのか?

安部芳裕著、「日本人が知らない恐るべき真実 増補版」、晋遊舎新書、900円、を読んでいます。
そのなかで、日本がいかにアメリカの金づるにされているかという話が載っています。
簡単にまとめると、
1.日本は一所懸命働いて製品を作り、アメリカに輸出し、ドルを稼いだ。
2.アメリカのドルがだんだん値打ちがなくなってきたので、円高ドル安傾向になった。
3.円高ドル安になると、アメリカに輸出できなくなるので、日本は市場介入し、ドルを買い支えた。その金額は貿易黒字の2倍にもなる。
4.日本は貯まったドルで米国債を買う。利子は付くけれど、その米国債を売却してドルに戻すことはできない。そういうことを言っただけで、脅されたことがある。
5.アメリカにはこうしてドルが戻ってきて集まる。
6.アメリカは集まったドルで外国企業を買収する。不良債権で破綻した日本の銀行は、不良債権をあらかたチャラにした後で、米国のハゲタカに買われた。
7.アメリカは、買った企業を再生して上場させ、オニのような上場益を得た。
8.こうして、ドルが再びアメリカに戻る。



頭の良いやつにはかなわないという感じですが、正直詐欺ではないかと思います。
こうしたアメリカ式をありがたがって、コンプライアンスだの規制緩和だの蜂の頭だのと崇め奉っている連中がたくさんいます。
とくに、団塊の世代がひどいような気がしますが、これは、私の周囲の先輩たちだけかもしれません。
日本はアメリカが用意した土俵で戦うことはやめて、別の方策を考えたほうがよいのではないかと思います。

2012年6月3日日曜日

日本式製造業の誤り

よく言われる言葉であるが、「地獄への道は善意の玉砂利で敷き詰められている」というのがある。
かのカエサルも、「なにごとも最初は善かれと思って始められたのである。」というような言葉を述べている。
偉大な空手家の南郷継正先生は、「武道の理論」の中で、柔道が畳を採用し、剣道が竹刀を採用したために、真の武道の姿を失ったと書いている。

私が今回言いたいのは、製造業の衰退についてである。
なぜ、わが国の製造業がかつての輝きを失ったかについては、いろいろな人がいろいろな意見を述べているが、これから書くことを言っている人は、たぶんいない。
それは、コスト低減の努力がわが国の製造業の衰退の一因である、ということである。
こんなことを書くと、馬鹿を言うなと、しかられるだろう。
しかし、私の考えはこうだ。

製造業や関連の工業分野では、コスト低減が至上命令である。
そのために、購買部門は以下に安く仕入れるかに血道を上げ、複数の業者から相見積もりを取って、さらに購買力にものを言わせて値下げ要求をする。 いわゆる「買い叩く」のである。
それに応じて、納入業者や工事業者は、単価を水増しし、買い叩かれても最低限の利益は確保しようとする。

問題はここから始まる。
こうした行為が日常的になった結果、もの作りに対する誇りがなくなってしまったのである。
部品屋は一生懸命心を込めて製品を作っても、結局買い叩かれるのだから、どうしてもやる気がでない。
一方、完成品メーカーとて同じである。
消費者も、工場の購買担当と同じように買い叩くのである。
日本中に「買い叩き」文化が定着してしまったのだ。
食品もそう、農産物もそうだ。

そもそもの出発点は、松下幸之助の「水道哲学」にみられるように、大衆に良い商品をできるだけ安く提供したいという善意である。
こうした善意から出た結果が今日のわが国のもの作りの衰退となっているとしたら、こんな皮肉なことはない。
一刻も早く改めたい。

では、どうすればよいか。
「良品を買うにはそれなりの金額を支払う必要がある。」という原則を周知することである。

わが国の農産物は、流通業者が価格支配権をもっているので、農家は買い叩かれる。
消費者はスーパーなどで安く買えるが、品質本位で買うことが難しい。
農家は作付け計画をしても、天候などの条件で投資が無駄になることもある。
一方、スイスでは、ミグロという生協が消費者教育をしっかり行い、
消費者は「良いものは高いのだ」という認識を持っている。
そのために、農家の年収は比較的高い。

わが国の製造業は、作りすぎのために値段を下げなければ売れない。
消費者は似たり寄ったりの商品を量販店で安く買うことが当然だと思っている。
しかし、アップルが製品価格を下げないことには、特に不満は出ない。
そのうえ、アップルの製品を買う人は満足感を持っている。

買い叩きをやりすぎて自分の首を絞めている企業もある。
トヨタ自動車は、なぜかいまだに利益が出ているが、協力会社はどこも青息吐息である。
これを続けていくとどうなるのかわからないのだろうか。

買い叩かれないためには、どうすればよいのだろうか。
私も今すぐにはわからない。
一つは、これも松下幸之助が提唱した「ダム経営」を目指すということかもしれない。
ダム経営であれば、銀行から借りた資金の利息を支払うために、無理してでも
商品を納め続けることから解放されるだろう。
しかし、どうしたらダム経営になれるかは、松下幸之助もわからないと言った。
ただ、「それを目ざさなければあかんのや。」と言ったそうである。

自分が買い叩きをやめることから始めるのが唯一できることかもしれない。